カーボンニュートラルニュース vol.54

(2025.09.22)


九州大学と九州電力が
「天然水素」の国内初の調査を開始
今年度中に埋蔵量などの
ポテンシャル評価も


 国立大学法人九州大学と九州電力㈱が2025年度の1年間、九州全域での天然水素埋蔵量のポテンシャル評価と、その採掘手法や社会実装に向けた調査などを実施している。

コロンブス2509
天然水素の資源開発におけるイメージ図

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「九州地域の天然水素資源開発に関する研究開発」をテーマとする「先導研究プログラム/フロンティア育成事業」に採択されたもので、予算額は1000万円。

 国内で天然水素が観測された例は長野県の白馬八方温泉で偶然発見されたのみで、調査がすすんでいないのが実態だが、九州は地殻構造からして相当な量の「蛇紋岩化作用」(※)による天然水素が埋蔵されている可能性が高いといわれる。

 九州大工学研究院地球資源システム工学部門教授の山田泰広氏によれば「橄欖岩や蛇紋岩が地表に露出した福岡県篠栗町周辺、長崎市野母崎、大分市佐賀関、熊本県と宮崎県の県境・高千穂町近隣などを現地調査し、採取した岩石を用いて水素生成実験をするほか、岩体の形状や地下構造の調査も進め、水素生成のポテンシャルや埋蔵量を探っていく」という。

 一方、九州電力は企業間ネットワークを生かし、天然水素を社会実装するにあたっての調査をすすめる。「今年度中に関連企業に関する調査を実施するが、単年度で終わる事業ではなく、継続的にすすめていかなければならない」(同上)とのこと。「第7次エネルギー基本計画」でも、次世代エネルギーとして「天然水素」の開発に取り組むことが明記されており、九州地域の天然水素資源開発に関する今回の調査には大きな期待が寄せられている。

※蛇紋岩化作用……天然水素が発生するメカニズムのひとつ。橄欖岩(カンランガン)の割れ目に水が入り込み、そこに高温の熱が加わることで蛇紋岩(ジャモンガン)に変質する際に水素が発生する。

出典:九州大学、九州電力の共同リリース