カーボンニュートラルニュース vol.52

(2025.09.16)


今治市が
水素サプライチェーン構築の調査を開始
ごみ焼却熱を利用して製造した
水素を地域産業や観光業に活用


 今治市はこのほど、日本環境技研㈱、愛媛県繊維染色工業組合、四国ガス㈱、㈱タクマ、三浦工業㈱、明治電機工業㈱、トヨタ紡織㈱、日本特殊陶業㈱、㈱今治.夢スポーツ、㈱ミライト・ワンなどとともに、2025年度環境省公募事業に採択され、「愛媛県今治市における地域産業と観光業による水素サプライチェーン構築及び付加価値創出に関する調査」をはじめる。

コロンブス2509
水素サプライチェーンの事業イメージ図

 ごみ処理施設・今治市クリーンセンターではごみ焼却時の熱を利用した発電を行っているが、その電気を使い切れていない現状がある。そこで、「その余剰電力と排熱を活用した個体酸化物形水電解装置(SOEC)による水素製造を探ることが出発点」(今治市環境政策課)。SOECでは高温(700℃)の水蒸気を電気分解して水素を製造するが、その際に排熱を利用。低温での電気分解よりも必要なエネルギーが少なく消費電力を減らすことも可能に。日本特殊陶業㈱を中心に装置開発がすすめられ、全国のごみ焼却場への横展開もはかっていくという。

 また、今治市の波方ターミナルでは、海外からクリーンアンモニアを輸入し貯蔵・活用することが構想されているが、そのアンモニアから水素を製造することも合わせて調査される。製造された水素は地域産業に活用する予定で、たとえば今治タオルの染色などで使うボイラーの燃料を従来の化石燃料から水素に転換できないか検討する(水素ボイラーは三浦工業㈱が開発)。

 さらに観光業では、本州と今治市を結ぶ〝瀬戸内しまなみ海道〟でのサイクリングに水素自転車(トヨタ紡織㈱が開発)を導入したり、水素を燃料とした観光船の運行などが検討されている。今年度中に調査報告書をまとめ、来年度以降の実証事業につなげていく予定だ。