カーボンニュートラルニュース vol.51
(2025.09.09)
帆船の推進力で
水素をつくる商船三井の
「ウインドハンタープロジェクト」
NEDOの補助対象事業に採択
風力で水素を生み出すプロジェクトとして商船三井がすすめる「ウインドハンタープロジェクト」が、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助事業に採択された。水素製造・ポテンシャル利活用事業として、NEDOが今年度、プロジェクト遂行に必要な費用の一部を助成する予定だ。
同社のプロジェクトでは、帆船「ウインドハンター」が航行することによって水素をつくる。帆船の推進力で船体に取り付けた水中タービンを回して発電。その電気で海水を電気分解することで、二酸化炭素をまったく排出せずに水素(グリーン水素)を生産する。水素は船内でトルエンと結合させ、常温常圧のメチルシクロヘキサンという液体に変換して貯蔵、運搬する。
同プロジェクトは2020年にスタート。昨年度は東京湾で実証用ヨット「ウインズ丸」を使った実験を実施。航行中に生産した水素を東京都江東区の「海の森水上競技場」に陸揚げすることに成功した。今年度は陸揚げされたメチルシクロヘキサンを水素とトルエンに分離し、水素で発電させた電気を都の施設の給電に使う一方、トルエンはヨットに戻して再利用できるかを試す予定だという。開催中の大阪・関西万博では、「未来の都市」パビリオンで「ウインドハンター」の模型を展示。来場者がうちわであおいだ風で水素をつくる体験型アトラクションも実施している。
商船三井の担当者は「これまでの実証実験などの実績に加え、水素を効率的に生み出すことができる最適な近海の調査や供給先の情報収集など、言わば水素サプライチェーンの実行と計画がNEDOによって総合的に評価されたと考えている。2030年代に実証船を建造し、商用化することを目指したい」と話している。