カーボンニュートラルニュース vol.30

(2025.06.12)


福岡県内企業が豪州の
水素関連訪問団にプレゼンテーション
独自技術に豪州側から驚きの声が多数

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福岡県内企業がプレゼンする様子
 北九州市のリーガロイヤルホテル小倉で、豪州ニューサウスウェールズ州(NSW州)の水素関連訪問団による福岡県内水素施設視察の一環として、県内企業によるプレゼンテーションと交流会が3月12日に行われた。矢部川電気工業㈱、九州計測器㈱、㈱九州電化の3社が独自製品・技術を披露した。
 矢部川電気工業㈱は燃料電池セルで製造された水素中にCOなどの不純物が混入していないかを連続検査する「水素燃料ガス計測装置」を紹介。この装置は検査に使用する水素量が少量でも計測できるのが特徴で、年間約100万円のランニングコスト削減になり、その分析法がJISにも認定されていることなどをプレゼンした。豪州側からは、「水素ガス漏洩検知のため硫化水素(H2S)による匂いづけを行っているが、このH2S付き水素でも不純物を検出できるか」などの質問があがった。H2Sが水素中にあると通常、ほかの不純物がはかれなくなるが、矢部川電気工業から「H2S濃度とCO濃度を同時計測できる(特許取得)」と回答。豪州側には驚きの様子も。将来の商談につながる可能性も。

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矢部川電気工業の「水素燃料ガス計測装置」。水素中の微量なCO/H2S濃度(2要素)を計測できる
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「水素可視化システム」は水素の動きを多点計測して見える化する
 また、九州計測器㈱は「水素可視化システムHydlog」と「水素火炎可視化スマートグラス」をプレゼン。「水素可視化システム」は水素にのみ反応する水素吸蔵合金を薄膜化したシートを用いたセンサーで、多点計測により漏洩水素の動きを見える化するもの。「水素火炎可視化スマートグラス」は人の可視領域外の水素火炎を近赤外波長で捉え、拡張現実機能を備えたARグラス上で視認できるようにした装置。巡視点検での炎の発見や消化などにも活用できると説明。「水素だけになぜ、選択的に反応するのか、実績はあるのか、といった質問があったほか、ある豪州企業からは講演の誘いも受けた」(九州計測器)という。
 ㈱九州電化はガラス繊維とプラスチックの複合材(GFRP)への密着性が高く、強度を増すことができるメッキ技術を解説。多くの液体水素タンクでは内槽と外槽の真空中間層にGFRP材が用いられているが、このメッキ技術は、たとえば豪州から日本への液体水素運搬船で採用されているほか、フランス・エアバス社の水素飛行機計画やトヨタ自動車の液体水素燃料レーシングカーでも活用がすすめられていることも紹介された。豪州訪問団の関心を惹きだし、「商談に即つながったというわけではないが、他国にはない独自の技術を伝えることはできた」(九州電化)とのこと。
 この4日間で豪州との結びつきは強化されたと県関係者。11月に予定される福岡県のNSW州訪問に同行し、現地での展示会に出展したいとする企業も出ているようだ。

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九州計測器の「水素火炎可視化スマートグラス」
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九州電化はGFRP素材への高い密着性、強靭な耐摩耗性を併せ持つ特殊めっきを実現。GFRP(左)とめっき品(右)