カーボンニュートラルニュース vol.24
(2025.05.19)
神戸港で世界初の
水素エンジン発電機で稼働する
RTGの現地稼働実証がスタート
水素エンジン発電機は
スタートアップのiLabo㈱が開発

国土交通省は脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素・アンモニアなどの受け入れ環境の整備などをはかる「カーボンニュートラルポート(CNP)」の形成を推進している。
国土交通省近畿地方整備局はそのCNP形成に向けた取り組みとして、神戸港の神戸国際コンテナターミナル(KICT)においてタイヤ式門型クレーン(RTG)をディーゼルエンジン発電機から水素エンジン発電機に換装し、現地で稼働させる実証をはじめた。水素エンジン発電機で稼働するRTGによる荷役作業の実証は世界初。
埠頭では、コンテナを持ち上げて水平移動させることができるタイヤ付きの門型の大型クレーンRTGが稼働しているが、多くがディーゼル発電機を使っているためCO₂の排出が生じていることが課題に。そこで、これを水素エンジン発電機で稼働させて港湾の脱炭素化をはかろうというのだ。
この事業は阪神国際港湾㈱が受託し、KICTのオペレーターである商船三井㈱、商船港運㈱による実証フィールド提供に加えて、RTGのシステム設計が㈱三井E&S、水素エンジン発電機の開発・製造はスタートアップのiLabo㈱、水素供給・充填を岩谷産業㈱が担うなど、多くの協力会社が参加して行っている。注目を集めているのはiLabo㈱の水素エンジンだ。「RTGに装備された水素タンクから供給される水素をインジェクターで噴射してエンジンを回す。環境に配慮しながら発電もシッカリ行うことができる」(同社管理本部事業推進部)とのこと。また、優れた耐塩害性を備えている点も水素エンジン発電機の特徴。潮風や海水飛沫の影響を受けやすい港湾においては電気系統の腐食が課題となるが、水素エンジン発電機はその構造上、塩害に強く、安定した運用が期待される。また、燃料電池と異なり高純度の水素を必要とせず、相対的に低品位の水素でも運用できるので、将来的な水素燃料のコスト低減にも大きく寄与するとみられている。
近畿地方整備局によれば、2025年度の実証では水素を使った荷役機械の将来的な導入に向けて操作性、連続稼働時間、水素充填時間、水素使用量、CO₂削減効果、コストなどさまざまなデータを取得する予定で、それを踏まえて2025年度中に「水素を燃料とする荷役機械の導入に係るガイドライン(仮称)」(案)の公表を目指すとともに、港湾の施設の技術上の基準の改訂を検討する予定。