カーボンニュートラルニュース
(2025.04.17)
水素ビジネスに取り組む実業家と
バイオ燃料コンサル代表が
カーボンニュートラル燃料を巡る
世界・日本の動向を情報交換

14月11日(金)、東京銀座にある水素エネルギー研究会最高顧問の入交昭一郎氏のオフィスで、Lao Green Hydrogen Co.,Ltd. (ラオ・グリーン・ハイドロジェン)代表の西尾龍太郎氏と日本環境エネルギー開発㈱代表取締役社長の澤一誠氏が昨今のカーボンニュートラル燃料を巡る世界・日本の動向について情報交換を行った。
ラオ・グリーン・ハイドロジェン社の「水素コーヒー」や
「グリーンアルミニウム」のプロジェクトが進展中!!
西尾龍太郎氏は現在、ラオスにおけるグリーン水素の製造、利用ビジネスに取り組んでいる。ラオスは原子力発電所8基分もの水力発電所の発電能力を有しており、電気料金は日本の3割。「この安価で大規模な電力でグリーン水素を生み出し、水素エネルギーで高付加価値な加工製品をつくって販売しよう」と、まずはコーヒーの生豆をグリーン水素の燃焼熱で焙煎して売り出すために事業会社ラオ・グリーン・ハイドロジェン社を設立、日本、ドイツ、ラオスの企業と組んでプロジェクトをすすめ、日本・ラオス両政府からの支援も得てラオス南部の「パクセー・ジャパン経済特区」に焙煎工場を新設することに。2026年半ばから焙煎工場を稼働させる予定だ(月刊『コロンブス』2025年1月号「水素エネルギー研究会」参照)。
西尾氏は今回の来日で、入交氏にこの「水素コーヒー」プロジェクトの進捗を報告、さらに同時並行ですすめている「水素エネルギーによる金属加工製品の生産、販売事業」の計画についても詳細に話した。聞けば、ラオスの国土の地下には60億㌧ものボーキサイトが手つかずで眠っているという。ボーキサイトといえばアルミニウムの原材料。カーボンニュートラルなモノづくりが求められている今、温室効果ガスを排出せずに水素エネルギーで製造する「グリーンアルミニウム」は世界的に需要が高い。西尾氏はこれをラオスの安価な電力で生産する体制を整備し、同国の新産業として確立するプロジェクトに乗り出しているのだ。現在、大型水力発電所の増強も見据え資金調達に奔走しているほか、生産したアルミニウムを運搬するための独自の物流ルートの開発にも挑戦中、日本や東南アジア、インドなどの関連企業、ラオス・日本政府機関と協議を重ねているところだという。こうした報告を受け、「日本各地で水素エネルギー関連の実証は盛んに行われるようになったが、西尾さんのように専門の事業会社を立ち上げて水素ビジネスに挑戦している例はほかにない」と入交氏。「国内外の多くの関連企業を巻き込み、ラオス、日本両政府からのバックアップも得て、水素の生産から水素エネルギーによる製品開発、販売にいたるまですべてを手掛ける西尾さんのプロジェクトの今後に期待したい」と話していた。

日本でもようやくバイオ燃料の導入が本格化!?
機運醸成のためには正確な情報発信が欠かせない
バイオマスエネルギー専門のコンサルティング業務に取り組んでいる日本環境エネルギー開発㈱の澤一誠氏によれば、日本はこれまでバイオ燃料(※)の導入で海外諸国から圧倒的に遅れを取ってきた。米国ではガソリンにエタノールを10㌫混ぜた「E10」が一般的に普及しているほか、ブラジルではガソリンへのエタノールの27㌫の混合が義務づけられており、欧州連合(EU)や中国もエタノール混合を義務としている。一方、日本では現在のところ2㌫未満しか混合されていない。が、2050年カーボンニュートラルに向けた機運の高まりのなかでようやく、昨秋に経済産業省が乗用車の燃料としてガソリンに混ぜるバイオ燃料の導入目標をはじめて策定すると表明。その後、今年2月公表の「エネルギー基本計画」に盛り込まれた。その方針案によれば、石油元売りが30年度までにバイオ燃料を最大10㌫混ぜた燃料の供給をはじめ、40年度からは同20㌫混ぜた燃料の供給もはじめる見通しで、同省では25年5月までに具体的なアクションプランをまとめるとしており、次世代燃料官民協議会のワーキンググループ(エタノールタスクフォース)で現在、議論されている。
澤氏はあらたにHPを立ち上げてバイオ燃料に関する情報発信に尽力しているが、「日本人はバイオ燃料にあまり馴染みがなく、E10、E20の導入に向けては正確な情報発信が非常に重要。機運醸成のためにも、今後バイオ燃料をテーマとしたシンポジウムも企画中」だという。
* 月刊『コロンブス』ではあらためて、本コーナーにて西尾龍太郎氏のラオスにおけるグリーンアルミニウムプロジェクトや澤一誠氏によるバイオ燃料普及に向けた活動について詳しく取り上げていく予定です。乞うご期待‼