カーボンニュートラルニュース
(2025.04.07)
原子炉(高温ガス炉)の熱を利用して
水素を大量かつ安価に製造
2030年代の実証試験開始に向けて
政府も後押し

二酸化炭素を排出することなく、原子炉(高温ガス炉)の熱を利用して水素を大量かつ安価に製造する技術への期待が高まっている。国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が開発した「HTTR(高温工学試験研究炉)」(茨城県大洗原子力工学研究所)では、燃料被覆にセラミック材、炉内構造物に黒鉛材料を使用し、冷却材には水の代わりに化学的に不活性で高温でも構造物と化学反応を起こすことがないヘリウムガスを採用することで、通常の原子炉(軽水炉)よりも高温の熱を取り出せるとしている。このシステムにあって、原子炉の出口部分で850℃から950℃(軽水炉では約300℃)の高温熱(ヘリウムガス)を安定的に取り出すことができ、約700℃から900℃の熱が必要とされる高温水蒸気電解法(SOEC)などによる水素製造ができるとしている。JAEAでは、高温熱を直接利用する水素製造法として熱化学法ISプロセス(ヨウ素と硫黄の化学反応を用いて高温熱だけで水を水素と酸素に分解する手法)の研究開発もすすめている。
すでに原子炉の出口温度950℃での50日間の高温連続運転に加えて、事故時においても炉心溶融が起きないことを実証する安全性実証試験に成功している。

なお、高温ガス炉開発に関しては、政府の「GX実現に向けた基本方針」(2023年2月閣議決定)で2030年代の運転開始を目標とする実証炉開発工程が示されるとともに、経済産業省の革新炉ワーキンググループが同実証炉建設に向けた技術ロードマップを制定。さらに資源エネルギー庁が、高温ガス炉実証炉の基本設計や将来的な製造・建設を担う事業者として三菱重工業㈱を選定するなど国家プロジェクトとして推し進められている。その中核研究機関としてのJAEAの今後の動向に注目したい。
