カーボンニュートラルニュース

(2025.03.24)


入交昭一郎のカーボンニュートラル提言
日本は海外諸国と連携して早急に
脱CO₂ 産業を育てるべきだ!!

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水素エネルギー研究会最高顧問水素エネルギー研究会最高顧問、元本田技研工業㈱副社長 入交昭一郎氏(83歳)

水素エネルギーの普及、社会実装をすすめるには何よりコスト低減が必要であり、自治体や民間事業者などが地域全体をまかなう規模で水素エネルギーを導入するには、水素の価格を1立方㍍あたり20円程度まで下げねばならない。だが、国土の狭い日本ではグリーン水素を製造するための再生可能エネルギーのコストがどうしても高くなる。経済産業省によれば、日本の太陽光発電のコストは1㌔㍗/hあたり9.9円(2023年下半期)、これでは水素価格は50~100円となってしまう。
他方、サウジアラビアの太陽光発電のコストは1㌔㍗/hあたり3円、チリも風力発電で近い将来、2円まで下げると明言しており、これなら水素の価格を20円以下に抑えることも可能だ。また、月刊『コロンブス』1月号で日本・ラオス両政府のバックアップで日本人起業家の西尾龍太郎氏が水素ビジネスに挑戦している事例を取り上げたが、そのラオスでも原発8基分もの水力発電能力を有することから、5円程度で1㌔㍗/hの電力を供給できるとしている。日本の水素エネルギー戦略としては、やはりこれら安価な電力を得られる国々と連携し、現地でグリーン水素やそれに由来するe-fuel、グリーンアンモニアといった次世代燃料を生産し、タンカーなどで運んでくる国家プロジェクトを立ち上げるべきだ。さらにはもっと先を見据えて、ネパールなど農業や観光以外に目立った産業のない国とも連携し、現地に発電や水素製造のインフラを立ち上げるというのも一案ではないか。

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ところで、3月5~11日に行われた中国の全国人民代表大会(全人代)で、習近平国家主席がハイテク分野の振興計画「中国製造2025」(2015年5月に発表)について「産業高度化の目標の9割を達成した」と発言していた。これは事実といっていいだろう。AI、半導体、EV、宇宙ロケット、カーボンニュートラルなど、あらゆる分野で中国の躍進は目覚ましく、再生可能エネルギーの導入量でもダントツトップ、国を挙げてカーボンニュートラル政策に邁進している。残念ながら、日本の社会体制では中国式のドラスティックな産業政策やスピード感には敵わない。では日本の産業は今後、どうしていけばよいのか。そう問われたら、私は「みずからイノベーションを起こしてあらたなモノを生み出すのではなく、たしかな技術や信頼に足る品質をウリとする〝世界の下請け工場〟に徹すれば生き残れる」となかば皮肉交じりに答えるようにしている。もちろん、日本のモノづくり企業の技術水準や研究開発力が高いことはたしかなので、カーボンニュートラル分野においてはぜひとも〝下請け〟ではなく独自の国家プロジェクトを打ち出してほしい。前述のように、まずは海外諸国に日本の技術とノウハウであらたな産業と雇用を生み出せるメリットを広く伝えて、国際協調の輪を広げることが肝心だ。