カーボンニュートラルニュース
(2025.03.03)
入交昭一郎のカーボンニュートラル提言
水素の供給コスト低減策と、地産地消型の
エネルギーシステムの実績づくりが重要だ!!

日本政府は水素基本戦略で2040年に1200万㌧の水素を導入するという目標を掲げているが、供給コストが高止まりをつづける水素の需要を伸ばすには当然、化石燃料との価格差を何らかの方法で埋めるしかない。そのために2024年5月には水素社会推進法が成立し、水素の供給や利活用を行う事業者に対して価格差を補填したり、あらたなインフラ整備の拠点整備を支援する助成金が交付されることになった。ただ、材料費や設備費の高騰で再生可能エネルギーに逆風が吹いている今、先行きは厳しい。先月号の本コーナーでも触れた通り、ヨーロッパでは昨年、EU委員会が「欧州水素銀行(European Hydrogen Bank)」をスタートし、現状では製造コストが1立方㍍当たり50~100円かかっている水素を30円で販売できるよう価格差を補填する、という財政支援に取り組んでいる。日本でも東京都が2024年12月、日本取引所グループ(JPX)のウェブサイト内に設置した特設サイトで、グリーン水素価格を入札できめる「グリーン水素トライアル取引」を実施したが、こういう取り組みの拡大を急がねばならない。
こうしたなか、従来の化石燃料と水素との価格差をものともせずカーボンニュートラル政策に邁進しているのが中国だ。2022年3月に公表した「水素エネルギー産業発展の中長期計画」によれば、2025年までに「燃料電池車5万台、グリーン水素年間10~20万㌧」を達成するとし、町なかではすでにFCV(燃料電池車)のバスやバイクが行き交い、再生可能エネルギーの導入も風力、太陽光ともに世界一となっている。また、ヨーロッパで使われている水素製造装置などの設備の多くが中国製といわれている。日本は中国のような問答無用の国家施策を打ち出すことはできないが、何とか政府と大手民間企業が手を携えて、目先の経済合理性の壁にとらわれることなく、10年、20年先を見据えた補助策や事業を展開してほしいと願っている。
他方、山梨県の「やまなしモデルP2Gシステム」や清水建設の「Hydro Q-BiC」など、地産地消型の水素エネルギーシステムの実証や事業化が着実にすすんでいる。まずはそうした小ぶりなエネルギーシステムを石破政権の掲げる「地方創生2.0」の目玉のひとつとしてパッケージ化して各地に展開し、水素エネルギーをベースとしたまちづくりの実績を重ねていくことも重要なのではないか。