第11回 水素エネルギー研究会
(月刊『コロンブス』2024年9月号掲載)
札幌市と北海道が主導し動き出した
産学官金の「Team Sapporo-Hokkaido」
一大消費地・札幌が「水素産業」で
新しい産業基盤づくりに挑戦!!
G7札幌を機に市と道が産学官金でGX産業集積へ
2023年4月、北海道札幌市でG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合が開かれ、各国で連携して気候変動やエネルギー危機に対処していくため、省エネや再生可能エネルギーの導入拡大、炭素回収技術の活用などについて具体的な目標やルールを設けることが合意された。
札幌市ではこうした国際的な動きを受け、北海道とともに「脱炭素社会の未来を拓く北海道・札幌宣言」を発表。
6月には産学官金21機関からなるコンソーシアム「Team Sapporo-Hokkaido」を立ち上げ、GX産業の集積とそれを支える金融機能の強化・集積を両輪ですすめていくことに。
札幌市まちづくり政策局政策企画部グリーントランスフォーメーション推進室の水素事業担当課長、佐藤友永氏によれば、このコンソーシアムでは8つのプロジェクトを掲げており、そのひとつとして「水素の供給・需要の一体的な実証モデルの展開」に北海道電力㈱や北海道ガス㈱、水素ガスを製造・供給している産業ガスメーカーのエア・ウォーター㈱などと連携して取り組んでいくという。
FCVによる新公共交通や水素ステーションの設置
ただ、そのための関連施策や投資額などがきまるのはまだこれから。市内における水素エネルギーの需要をどう高めていくか、そして水素を実際にどう生産・供給していくかを検討している最中だ。
まず、需要の創出に向けては「市内に水素燃料で動くモビリティとそのインフラを普及させていく」と佐藤氏。そのための取り組みとして、新公共交通プロジェクトが動き出している。
これは「定員約120人の大型のFCV(燃料電池車)を導入し、JR札幌駅や苗穂駅、すすきの地区などのエリアできまったルートを運行する計画」で、定員30人程度の中型車両と10人程度の小型車両も市民の予約に応じて運行するという。
今秋にはテスト走行、来年度以降、乗客を乗せた試験運行を行っていく見通しで、2030年の運行開始を目指すとしている。また「物流トラックのFCVも導入したい。北海道ならではの気候条件を生かしたFCVの寒冷地実証にも手をあげている」そうだ。
他方、FCVの必須インフラである水素ステーションについては、これまではエア・ウォーター社製の移動式水素ステーション(水素を充填する機能を有する設備を40フィートコンテナ内に搭載した移動可能な水素ステーション)があるだけだった。
だが現在、札幌市中央区大通東5丁目・東6丁目の旧中央体育館跡地で、道内初となるFCバス(燃料電池バス)やFCトラック(燃料電池トラック)などの大型燃料電池車にも対応可能な定置式水素ステーションの建設工事がはじまっている。
無論、水素ステーション1基ではFCVの普及には足りないが、まずは第一歩といったところだ。ちなみに、この水素ステーションの隣りの敷地では集客・交流施設の建設が予定されており、市は「水素を用いた燃料電池の設置」や「災害時の燃料電池稼働や省エネ性能の高い建物の建設」などを条件に建設・運営事業者を公募するという。
こうした拠点を設けることで、市内における水素需要の高まりが期待できそうだ。
地産地消と広域連携の両輪で水素生産・供給体制を構築
では、水素エネルギーの生産・供給体制についてはどうだろうか。
たとえば、これまでに本コーナーで取り上げた山梨県であれば太陽光発電の余剰電力による水素製造、山口県周南市であれば地元のコンビナートから出る副生水素の活用といった背景があったが、札幌市はそうした産業基盤がないなかでいかに水素をつくるのか。
前出の佐藤氏によれば、市は「市内で水素を製造し、供給するための体制整備に向けた検討を行っている」という。ただ、市内には産業用地がかぎられており、すべての水素エネルギーを地産地消するというわけにはいかない。そのため、広域連携を視野に入れていくことになる。
何しろ北海道は国内随一の再生可能エネルギーのポテンシャルを秘めている。ぜひとも道内に、再生可能エネルギーによるグリーン水素の製造拠点をつくるべきではないか。この点について佐藤氏は「将来的にはそうしたプロジェクトも見据えながら、地産地消と広域連携の両輪で市内における水素の供給体制を整えていきたい」と話している。また、今後は「まずは地元の中小企業に、水素利活用のインフラのための部品や資材などの製造・加工などでぜひ水素関連産業に参画してほしい」と呼び掛けていきたいとしている。そうなれば市内だけでなく、周辺地域も含めて水素関連産業に乗り出す中小企業が増え、スタートアップなども呼び込めるようになる。北海道の一大消費地である札幌市が「水素産業のまち」にヘンシンする、その可能性大なのだ。ぜひとも「Team Sapporo-Hokkaido」をプラットフォームとして、道全体での水素関連産業の集積、育成をはかっていってほしいものだ。