第9回 水素エネルギー研究会
(月刊『コロンブス』2024年7月号掲載)
高純度な副生水素を大量に生産できる地場産業の強みを生かし、
官民連携で水素社会の基盤構築をすすめる!!
山口県周南市が製造業集積地における
脱炭素化の先進モデルになる!!
工場の副生水素を利活用実証事業から社会実装へ
周南市は山口県東南部の瀬戸内海に面した人口14万人弱の都市で、臨海部には瀬戸内工業地帯が広がっている。
製造品出荷額は県内トップで1兆4050億円、なかでも化学工業のシェアが高く1兆1034億円(約8割)で全国第3位となっている。その牽引役が周南コンビナート(※)だ。
無機化学、鉄鋼、セメントなどの大工場が集積しており、長年にわたって地場経済の生命線となってきた。だが近年、この一大産業の維持・発展と脱炭素化の推進をいかに両立させていくかが大きな課題に。
こうしたなか、市が2015年からすすめてきたのが「周南市水素利活用計画」だ。市産業振興部商工振興課コンビナート脱炭素推進室の周山健太郎室長によれば、周南コンビナートは苛性ソーダの生産能力が国内随一。
「化学工場などがこの苛性ソーダを生産する過程で副生的に発生する高純度な水素をエネルギーとして活用できないか」ということで市とコンビナートの企業などで周南市水素利活用協議会を設立。
さっそく、山口リキッドハイドロジェン㈱(岩谷産業㈱と地元の㈱トクヤマとの合弁会社)が液化水素製造工場を建設し、これを機に15年には岩谷産業が市内に中四国初の水素ステーション「イワタニ水素ステーション山口周南」を開設。
また、山口県の補助金を活用して16年度にはこの水素ステーションから約300㍍はなれた周南地域地場産業振興センターまで水素配管を公道へ敷設、17年度からは同センターに設置した3.5㌔㍗の純水素燃料電池に水素の直接供給を開始、ついで18年度から「周南市をフィールドとする純水素燃料電池の実証試験」を4年間にわたって実施した。
さらに、市では燃料電池自動車の普及に向けた取り組みにも力を入れている。23年度から山口県の支援で燃料電池自動車普及促進補助金をスタート、水素ステーション利用者への燃料費補助(充填1回あたり燃料費を1/2補助)を行っているほか、公用車として購入した燃料電池自動車を休日などに市民に低価格で貸し出すカーシェアリング事業(15分275円〜)も実施。
「30年までにはもう1カ所水素ステーションを増やし、200台の燃料電池車を普及させる目標を掲げ、1台でも多く燃料電池車を普及させよう」と手を尽くしている。
市は水素利活用推進事業費として年1000万円の予算をかけ、こうした水素利活用につながる事業のほか、情報発信や中小・中堅企業への水素関連製品の研究開発補助などにも取り組んでいる。
今年4月には「第2次周南市水素利活用計画」を策定し、水素サプライチェーンの充実や水素を活用した地域づくりの推進、水素関連産業等創出に向けた環境整備、市民・企業等への普及・啓発事業の強化をさらに加速させていくという。
「まだ実証段階の取り組みが多く、社会実装のためには副生水素を利活用するためのインフラ整備を急がねばならない」と前出の周山室長は話している。
コンビナートの脱炭素化をいかに推しすすめるか
高純度な副生水素を大量に生産できる強みを生かし、水素社会の基盤構築を着実にすすめる周南市。だが、それだけでは化学工業が盛んな地域のカーボンニュートラルは達成できない。
そこで、市内製造業における脱炭素化にも官民連携で取り組もうと22年1月、水素利活用協議会と同様に産業振興部商工振興課コンビナート脱炭素推進室が事務局となって周南コンビナート脱炭素推進協議会を立ち上げた。
協議会の構成は化学工学会、出光興産、東ソー、トクヤマ、日本ゼオン、そして日鉄ステンレス。経済産業省・資源エネルギー庁の「非化石エネルギー等導入促進対策費補助金(コンビナートの水素、燃料アンモニア等供給拠点化に向けた支援事業)」を共同で獲得し、「30年までに周南コンビナートにおける年間 100万㌧超のカーボンフリーアンモニア供給体制を確立することを目的に、アンモニアサプライチェーン構築に必要な共用インフラ整備の検討などを推進している」という。
副生水素の利活用促進とカーボンフリーアンモニアの生産体制の確立。その両輪でぜひとも、全国に先駆けて製造業集積地における脱炭素化を達成し、水素社会のお手本を示してほしいものだ。