第7回 水素エネルギー研究会

(月刊『コロンブス』2024年5月号掲載)


半世紀以上にわたり再エネ発電事業と
研究開発に取り組んできた先進県・山梨の挑戦!!

再生可能エネルギーと水で水素をつくる
「やまなしモデルP2Gシステム」が
地産地消エネルギーの新旗手に!!

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「やまなしモデルP2Gシステム」の特徴

再エネ先進県が目指す
地産地消エネルギーの安定化

山梨県は実に半世紀以上にわたる再生可能エネルギー事業の蓄積を持つ。
1957年に県として水力発電を事業化したほか、日照時間が長い地域特性を生かして太陽光発電事業にもはやくから着手。
さらに78年には山梨大学に日本初の燃料電池実験施設を設置し、産学官で次世代エネルギーの社会実装に向けた実証に取り組んできた。
そんな再生可能エネルギー事業の先進県、山梨が今もっとも注力しているのが「やまなしモデルP2Gシステム」だ。
山梨県企業局 新エネルギーシステム推進課の宮崎和也氏によれば、P2G(Power to Gas)システムとは「電力を熱エネルギーの元になるガス燃料に変換して貯蔵、有効活用する」仕組み。具体的には固体高分子(PEM/Polymer Electrolyte Membrane)型水電解法により、高分子膜を使って水を電気分解して水素を発生させるという。
山梨県がこのP2Gシステムに着目した背景には、全国で課題となっている太陽光の出力制御問題があった。電気は基本的に貯めることができないため、電力供給量が需要を上回る際には「出力制御」が実施される。
とくに太陽光は発電量が変動するので、電力需要が少ない時期には「晴れているのに出力制御で発電できない」ということになる。ここ数年、再生可能エネルギーのニーズが高まるなか、こうしたケースが増えて問題になっているのだ。
事実、昨年度には全国で年間約20億㌔㍗/hが出力制御で発電できなかったといわれる。「P2Gシステムを活用すれば、こうした問題を解消できる」と宮崎氏。
「これまで山梨県が確立してきた太陽光発電の余剰電力を有効活用して貯蔵に適したグリーン水素をつくることで、地域の電力供給を安定させるのはもちろん、日本の弱点であるエネルギー自給率の向上にも貢献できる」という。
県は数年がかりの研究の末、米倉山電力貯蔵技術研究サイトに1500㌔㍗規模で1時間に360〜370立法㌔㍍の水素を製造できる「やまなしモデルP2Gシステム」を確立した。
これが約2年前から稼働しており、経過は順調。山梨県における地産地消エネルギーの安定供給体制の確立に期待が集まっている。

官民連携で安定化と低コスト化を目指す

このようにつぎつぎと導入事例が増えている「やまなしモデルP2Gシステム」だが、もちろん課題もある。
「装置導入のイニシャルコストが高いほか、ランニングコストも天然ガスの10倍以上と高くつく。
さらなる普及のためによりローコストで安定的に水素を製造するための改良が求められている」と宮崎氏。
そこで山梨県は22年、東レ、東京電力とともに合弁企業「やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)」を設立した。
「再生可能エネルギー事業の先進地として、先陣を切って民間事業者がP2Gシステム導入で着実に利益を生み出せる仕組みづくりを目指し研究をすすめる」という。
今後の展開が楽しみだ。
本コーナーでは次号も引きつづき山梨県の取り組みにスポットを当て、県の再生可能エネルギー研究の拠点である米倉山電力貯蔵技術研究サイト、とくにこの4月にリニューアルオープンした展示施設を紹介したい。

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「やまなしモデルP2Gシステム」導入事例