第6回 水素エネルギー研究会
(月刊『コロンブス』2024年4月号掲載)
目指すは2050年脱炭素社会!!
東京都がグリーン水素の利活用促進と
製造・供給事業にチャレンジ!!
東京都ならではのグリーン水素利活用推進策
東京都は2030年カーボンハーフ(温室効果ガス排出量半減)とその先の2050年ゼロエミッション東京の実現を目指し、独自に「東京水素ビジョン」を掲げている。水素エネルギーの社会実装に向けた取り組みを加速するために都は24年度に合計203億円(前年度114億円)の予算を計上した。
今号では、その予算事業のなかでも、とくに重点項目とされているグリーン水素の利活用推進に関するものを紹介したい。
「脱炭素社会の実現には、これまで以上に再生可能エネルギーを導入する必要があるが、太陽光や風力は季節や天候の影響で発電量が変動する。そこで重要になってくるのが長期間、大量にエネルギーとして貯蔵できる『水素』だ」と話すのは東京都産業労働局 産業・エネルギー政策部水素エネルギー推進担当課長の村野哲寛氏(38歳)。「電力需要の少ない春に太陽光発電でつくった余剰電力で水素をつくって貯めておき、電力需要が多い夏や冬にまた電気にして使う。このようにグリーン水素(※)を再生可能エネルギーの調整力として使うことが脱炭素社会のカギを握る」と。
こうした考えの下、東京都では「2050年におけるグリーン水素の本格活用」を目指し、さまざまな補助事業を打ち出している。
その筆頭が「グリーン水素製造・利用の実機実装等支援事業」だ。これは都が公表している水素製造から利用までの設備のモデルプランを導入する民間事業者に対し、2億5300万円を上限になんと10分の10、つまり費用全額を助成するというもの。
「再生可能エネルギーによる電気で水素をつくり、それを貯蔵し、水素燃料ボイラーや純水素型燃料電池でエネルギーとして活用するまでの一連の設備」を設置する必要があるが、村野氏によれば「モデルプランの設備は都内の狭小地でも設置可能」とのこと。
「中堅・中小モノづくり企業などが自社で利用するエネルギーの一部をみずから生み出す、そんな事例を都内に増やしたい」という。
このほかにも、都は「再エネ由来水素の本格活用を見据えた設備等導入促進事業」や業務・産業用燃料電池の導入を支援する「水素を活用したスマートエネルギーエリア形成推進事業(業務・産業部門)」など、水素の利活用促進につながるさまざまな補助事業を実施している(表組参照)。
さらに都はこうした補助事業に加えて、みずからグリーン水素を製造する事業にも乗り出している。
山梨県との共同事業として、都内初の本格的な水素製造施設を大田区京浜島の都有地(2255.79平方㍍)に整備中で、25年度には水電解装置1基を稼働させる。
将来的には全3基を稼働させる予定。都産業労働局産業・エネルギー政策部水素エネルギー事業推進担当課長の田中真里氏(45歳)によれば、1基当たり1時間に最大約9㌔㌘の水素を生成することができ、つくった水素は都内の水素ステーションや都有施設などに供給していくそうだ。
「現状では水素はコストが高すぎて民間事業者が手を出しにくいため、まずは公的支援で利用促進をはかり、これだけかぎられた土地でも水素エネルギーをつくって活用できるということを示すことで、エネルギー転換に向けた機運をつくっていきたい」と話している。
水素エネルギーに関する情報発信に注力
機運醸成といえば、水素エネルギーについての普及啓発や「東京水素ビジョン」の認知度向上も重要だ。こうした点について、都は民間企業や都内自治体など100以上の団体とともに「Tokyoスイソ推進チーム」を組織し情報交換や交流を重ねているほか、水素を体験しながら学べる総合学習施設「東京スイソミル」(江東区潮見)を拠点とした情報発信や都内の学校への出前授業などに取り組んでいる。23年6月には水素エネルギーに関連する情報を集約したHP「Tokyo水素ナビ」を開設。また最近では、羽田イノベーションシティで「水素エネルギーで変わる羽田エリアの未来を想像しよう」をキャッチコピーに「HANEDA未来展」を開催するなどイベントを通じての水素事業のPRにも積極的だ。
同じく羽田空港臨海エリアにおける水素の利活用拡大を目指す「羽田エリア水素ミーティング」では、専門家の講演会や民間企業、官公庁の取り組みの展示のほか、水素で動くフォークリスト見学や水素コンロでの調理デモなども実施。
前出の田中氏は「こうした機会に都民が水素を身近に感じ、事業者が水素事業への参画を検討する契機になれば」と話している。
未来のエネルギー転換を現実のものとするため、グリーン水素の利活用促進とその機運醸成に全力で取り組む東京都、まずは官民あげて着実に2030年カーボンハーフの達成を実現してほしいものだ。
※グリーン水素……再生可能エネルギー由来の電力を利用し、CO₂を排出せずに製造された水素のこと。