第2回 水素エネルギー研究会

(月刊『コロンブス』2023年12月号掲載)


カーボンニュートラルを実現し、
部品3万点の自動車産業を維持!!

水素由来のe-fuelを軸とした
国産エネルギー構想を掲げて入交昭一郎氏が全国行脚!!


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入交昭一郎氏(83歳)
1990年代に本田技研工業㈱で副社長を務めた経歴の持ち主。現在は個人事務所を立ち上げ、国産CN(カーボンニュートラル)燃料の社会実装に向けた独自の構想を政財界・産業界に広く伝える活動に奔走している。

e-fuelを軸としたマルチソリューションを提唱

次世代モビリティの動力源をテーマとした月刊『コロンブス』11月号の第2特集では、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けてヨーロッパを中心にすすめられていた「EV(電気自動車)シフト」の潮流が揺らぎ、水素由来の合成燃料「e‒fuel(イーフュエル)」を自動車の動力源とするアイデアが注目を集めていることを取り上げた。「e‒fuelをガソリン燃料に混ぜて自動車を動かすことで走行中に排出するCO₂を減少させ、将来的には100㌫e‒fuelを使用することでカーボンニュートラルを実現できる」―一貫してそう主張しつづけてきたのが、元本田技研工業㈱副社長の入交昭一郎氏だ。
氏はEVシフトが日本の自動車産業に与えるインパクトに強い危機感を抱き、e‒fuelを活用することによる「EV一辺倒」からの脱却を訴え、グリーン水素ベースのe‒fuelと、グリーンアンモニアによるCO₂の出ない火力発電で国産エネルギー生産体制を確立する「入交構想」を提唱、その主旨を政財界・産業界に広く伝える講演活動を展開している。さっそく、この10〜11月にそれぞれの会でどんな反応があったかを見ていきたい。

講演「CN燃料の日本における社会実装」を全国で

まず10月27日、岐阜県のモノづくり企業、岩田鉄工所の取引先事業者からなる「富蒼会」での講演会から。中部地区の製造業者約100名が集まった。その多くが何らかの形で自動車産業に関わっており、「EV化がすすめば、従来のガソリンエンジン車に必要だった約3万点の部品が1万点にまで減り、関連する仕事がなくなってしまう」と不安を抱いていたため、大いに反響があったそうだ。入交氏によれば「EV一辺倒ではなく、e‒fuelを燃料とするPHEV(プラグインハイブリッド車)や水素を燃料とするFCEV(燃料電池車)などを組み合わせるマルチソリューション体制を構築することで、内燃機関産業を維持できる。そう話したら皆さん希望を持ってくれた」という。ただ、「それでも今後、エンジン部品の需要が減少するのはたしかだ」と入交氏。そこで関連産業に携わる製造業者に向けて「ロボットや半導体製造装置、また政府が10年で1兆円規模の資金を民間企業や大学に供給するときめた宇宙産業など、自社の技術を他分野に活用する道を探り、数年がかりであらたな収益の柱をつくっていってほしい」とエールを送っていた。
宮城商工中金会の総会の際の講演には130名ほどの会員が参加した。同支店次長の佐藤綱高氏によれば「講演後の懇親会では入交氏に積極的に質問を投げかける参加者が多数いた」という。商工中金では現在、本部内に自動車関連部門やEV専門チームなどを設置し、「今後のモビリティ動力源を巡る動向やその影響をレポートしたり、関連事業者が産業構造の変化にどう対応していくかを助言したり」といった取り組みをすすめているそうなので、今回の講演会がそうした取り組みの拡充につながるのではないか、といった期待感も。
以上ふたつの会は聴衆が100名以上の大規模なものだったが、入交氏は依頼があれば少人数であっても講演「CN燃料の日本における社会実装について」を行い、この問題についての意識啓発に努めていく、としている。事実、11月18 日(土)には弁護士で政治家、元農林水産大臣の山田正彦氏が主催する「山田正彦の炉端政治塾」へ。会場に集まったのは山田氏の生き方や農業に対する考え方などを支持する一般人(有識者)や企業人、政治家の老若男女約15名。入交氏の話に興味津々で、講演後には「トヨタやホンダなどのメーカーはe‒fuelや水素エンジンについて今後どういった動きをとっていくのか」「政府のエネルギー政策における水素の位置づけはどうなっているのか」「今後の自動車部品メーカーの再編の動きはどうなるか」といった具体的な質問を投げかけていた。いずれの講演会においても、参加者がもっとも気になっているのは「モビリティ動力源の勢力図が今後、どう変わっていくのか」といった点だ。これに対して「現在、EVやFCEV、PHEV、水素エンジン車などさまざまな選択肢が持ち上がるなかで、各国や各メーカーの思惑、業界の事情が入り乱れ大混乱。私の予想ではこの混乱期はもう2〜3年つづき、それに関連事業者やユーザーは振り回されることになる」と入交氏。「ただ私は、かねて主張してきた通りカーボンニュートラルと次世代モビリティ動力源の解は、e‒fuelを軸としたマルチソリューションしかないと確信している。これからもその考えを広く伝えていきたい」と意気込んでいる。

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宮城商工中金会総会・講演会における講演会、約130人が参加した
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宮城商工中金会総会・講演会における講演会、約130人が参加した

e-fuelとグリーンアンモニアによる
日本型の「国産エネルギー構想」(入交構想)とは?

月刊『コロンブス』20223年5月号水素エネルギー特集で取り上げた、入交氏の国産エネルギー構想をあらためて紹介したい。
この構想のカギを握るのは、CO₂と水素(H₂)を合成して製造する合成燃料e-fuelだ。
まず①電力によって水を電気分解して水素を生成し、DAC技術(大気中のCO₂を直接分離・回収する技術)で空気中から取り出したCO₂と合わせてメタノールを生成、メタノールからe-fuelをつくる。と同時に②グリーン水素でアンモニア(NH3)も生成し、これを燃料として火力発電を行う(アンモニアは燃やして酸素と結びついてもCO₂を排出しない)。
こうして、水と空気のみを材料としたカーボンニュートラルなエネルギー生産体制を構築することができる。
ただ、当然のことながらそのための電力エネルギーをどうするかが課題となる。日本は気象条件的にも地理・土地条件的にも再生可能エネルギーによる発電を大規模に行うのは難しいので、③チリやオーストラリア、サウジアラビアなど、日本と比べて安価かつ大規模な再生可能エネルギー発電が行えるところで発電し、その電力によって①と②を行い、できあがった燃料はそれぞれタンカーで日本まで運ぶ。
この仕組みが実現すれば、これまで資源輸入国だった日本がはじめて、国産のエネルギーを生産することになる。
(詳しくは月刊『コロンブス』2023年5月号水素エネルギー特集を参照) →こちらから

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